2016年 07月 02日
フクロウの神がみずから歌った「銀の滴(しずく)降る降るまはりに」
『フクロウの神がみずから歌った「銀の滴(しずく)降る降るまはりに」を見てみよう。長文なので、ごく一部を掲げる。句読点などは適宜挿入した。
知里幸恵 作【アイヌ神謡集】
《「銀の滴降る降るまはりに、金の滴降る降るまはりに。」
と云う歌を私は歌ひながら流れに沿って下り、
人間の村の上を通りながら下を眺めると、
昔の貧乏人が今お金持ちになってゐて、
昔のお金持ちが今の貧乏人になってゐる様です。
海辺に人間の子供たちがおもちゃの小弓に、
おもちゃの小矢をもってあそんで居ります。
「銀の滴(しずく)降る降るまはりに、金の滴降る降るまはりに。」
と云ふ歌を歌ひながら子供等の上を通りますと、
(子供等は)私の下を走りながら云ふことには、
「美い鳥!神様の鳥!さあ、矢を射てあの鳥、神様の鳥を射当てた者は、
一ばんさきに取った者はほんたうの勇者、ほんたうの強者だぞ。」
云ひながら、昔貧乏人で今お金持ちになっている者の子供等は、
金の小弓に金の小矢を番(つが)へて私を射ますと、
金の小矢を私は下を通したり上を通したりしました。
其の中に、子供等の中に、一人の子供がたゞの(木製の)小弓に
たゞの小矢を持って仲間にはいってゐます。
私はそれを見ると貧乏人の子らしく、着物でもそれがわかります。
けれどもその眼色をよく見ると、えらい人の子孫らしく、
一人変り者になって仲間入りをしてゐます。》
文章はその後、その子を見て、今金持ちの子供があざけり、足蹴にするが、その子は構わず、絶えず私(フクロウ)を狙う。私はその様を見て不憫に思い、「銀の滴り降る降るまはりに」と歌いながら、大空に弧をえがく ———。
フクロウの神が昔と今を見つめながら、アイヌ民族と和人の立場を指摘しているのを知ることができる。』
【北海道、地名の謎と、歴史を訪ねて】合田一道 著より
阿寒にて(2016/05/30 撮影)
画像をクリックすると、拡大してご覧になれます。
知里幸恵 作【アイヌ神謡集】
《「銀の滴降る降るまはりに、金の滴降る降るまはりに。」
と云う歌を私は歌ひながら流れに沿って下り、
人間の村の上を通りながら下を眺めると、
昔の貧乏人が今お金持ちになってゐて、
昔のお金持ちが今の貧乏人になってゐる様です。
海辺に人間の子供たちがおもちゃの小弓に、
おもちゃの小矢をもってあそんで居ります。
「銀の滴(しずく)降る降るまはりに、金の滴降る降るまはりに。」
と云ふ歌を歌ひながら子供等の上を通りますと、
(子供等は)私の下を走りながら云ふことには、
「美い鳥!神様の鳥!さあ、矢を射てあの鳥、神様の鳥を射当てた者は、
一ばんさきに取った者はほんたうの勇者、ほんたうの強者だぞ。」
云ひながら、昔貧乏人で今お金持ちになっている者の子供等は、
金の小弓に金の小矢を番(つが)へて私を射ますと、
金の小矢を私は下を通したり上を通したりしました。
其の中に、子供等の中に、一人の子供がたゞの(木製の)小弓に
たゞの小矢を持って仲間にはいってゐます。
私はそれを見ると貧乏人の子らしく、着物でもそれがわかります。
けれどもその眼色をよく見ると、えらい人の子孫らしく、
一人変り者になって仲間入りをしてゐます。》
文章はその後、その子を見て、今金持ちの子供があざけり、足蹴にするが、その子は構わず、絶えず私(フクロウ)を狙う。私はその様を見て不憫に思い、「銀の滴り降る降るまはりに」と歌いながら、大空に弧をえがく ———。
フクロウの神が昔と今を見つめながら、アイヌ民族と和人の立場を指摘しているのを知ることができる。』
【北海道、地名の謎と、歴史を訪ねて】合田一道 著より
阿寒にて(2016/05/30 撮影)
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by gogo3jihh
| 2016-07-02 05:40
| エゾフクロウ (亜種)